6月のチラシは2枚です


6月のチラシは2枚です



今月のスープはグリーンピースの冷製クリームスープ、新タマネギ入りでした。
クルトンと、大人は黒こしょうをのせます。
グリーンピースの香りと甘さを新タマネギの甘さがひきたてています。
グリーンピースは豆の中では苦手な人が多いかもしれません。
それでもこのスープは誰でも好きになりそうです。
それほど豆の香りも味もとても洗練されているのです。
素材をそのまま味わうのもとてもいいですが、料理とはこういうものなのだ、と感じる美しいスープでした。

そして、グリーンピースとそらまめがちょうど旬を迎えたので、グリーンピースごはんとそらまめごはんを炊きました。
米に昆布と塩だけで味付けしたものにどさっと豆を入れて炊くだけです。
どちらの豆も癖がありますが、香りはそのままにとても甘くなりました。
こちらはほとんど手は加えない、素材の力強さを味わえました。
佐藤シェフの今月のコラム 13
「肉の焼き方」
今回は肉の焼き方についてです。これはとても専門的な話になります。
「肉を焼く」「肉に火をとおす」と一言で言っても、料理人一人一人それをどのように考えているかが違っているくらい、肉を焼くということは複雑です。
まず肉の種類がたくさんあります。牛肉、鹿、野鳥などレアでもたべられるもの、豚や羊のように脂がたくさんついた状態で焼くことの多い肉、さらに、同じ動物でも食べているものや育った環境によって肉質も違います。その種類や調理するときの肉の大きさによって焼く方法は全く違ってきます。普通は肉に急激に火を入れてしまうと、うまみが逃げてしまいます。それではどうやって良い温度で中まで火をまわせるか?例えば常温に戻した薄切り肉ならさっと焼けば余熱で火がまわります。羊や豚のように脂の多い肉のかたまりならオーブンのような高温にも耐えられ、脂身を下にしてそれ自体からでた脂で焼くことにより表面がパサつかないようじっくりと火を入れることができます。ちなみに同じ考え方でバターをちょうど良い温度に保ち、それをこまめにかけながら魚に熱をとおしていくのがムニエルです。
そして肉を焼く道具も様々です。昔ながらの方法ではフライパン、オーブンなどがあります。先ほど書いたようにどのように熱を加えるかによって使い分けられますが、使いこなすには経験が必要になります。今は肉の内部の温度を測る芯温計や真空パックで湯せんをする機械などもあります。技術の発達によってどんな肉でも温度を機械が調節して化学的にベストな状態を保ち火をとおしてくれるのです。
フランス料理店ではたいていお客様には焼き方は聞かず、シェフがその肉にとって一番良いと思う状態で焼いてだす場合が多いです。はじめに「肉を焼く」ということが人によって違うと言いましたが、それはどの状態がベストか?ということが料理人によってかなり違うということなのです。その考え方は理屈ではなく、実際の経験の積み重ねの結果でもあります。
それを考えると、誰でも同じように焼ける機械というのはとてもすばらしいものなのですが、人材育成の面では、はじめからからそれを使ってしまうと基礎がわからなくなるというおそれがあるように思います。一番単純な方法を使って基本的な技術を身につける過程は、自分のものの見方をつくるときでもあります。そして何かを続けていく場合、自分の考えをしっかり持つということはとても大切なことなのです。
5月のチラシは2枚です。



4月のスープは畑でも収穫真っ最中の春キャベツを使ったクリームスープ「春キャベツとケールのスープ、ベーコン風味」でした。
色はキャベツの優しい黄緑色です。
ベーコンを炒めた油で風味をつけたのでベーコン風味。
ベーコンが入っていないけれどほんのり香りがし、強すぎず春キャベツの甘さが引き立ちます。
焼いてパリパリにしたパルメザンチーズをくだいてトッピングしますが、その塩味がまた絶妙なアクセントになっています。
野菜のいいところを際立たせるプロの技がすごいです。

今月から畑の野菜を使って簡単な料理も作ります。
今回は、昨年畑で収穫した大豆と他2種類の大豆を炒り豆にしてごはんと一緒になべでたき、おにぎりにしました。
炊く前に、炒り豆の食べ比べをしました。
大豆の種類によって同じ炒り豆でもずいぶん味は違います。
ごはんはおいしくできました。
佐藤シェフの今月のコラム 12
「春の食材」
宮城では桜の季節が終わろうとしています。みなさんは春というとどんな料理を思い浮かべるでしょうか?わたしは普段はできるだけ地域の食材を使って料理をつくっていますが、この時期はフランスから白タンポポとホワイトアスパラガスを取り寄せています。タンポポは日本ではスーパーなどでは見かけませんが、フランス料理ではよく使われる食材で、山菜のように少し苦みがあります。白タンポポはホワイトアスパラと同じように、普通のタンポポを遮光して作られます。旬は3月初めから5月初めぐらいの2ヶ月間で、その間お店ではメニューに登場します。アスパラガスは東北では山形が有名ですが、旬はもう少し先になります。フランスのものは茹であげるまでに10分ぐらいかかりますが、日本のものはもう少し早く、水分が多いように感じます。湿気の多い日本の気候が影響しているのでしょうか?
日本はこの時期桜エビや桜鯛(真鯛がこの時期こう呼ばれています)、たけのこも旬です。たけのこと言えば、東京にいたときに鎌倉や千葉県からハーブを取り寄せていたため、ハーブ祭りなどがあるとお手伝いにいくこともありました。ちょうどこの季節に牛を一頭焼くために訪れたところ、たけのこをごちそうになることがありました。掘ったばかりのたけのこはアクがなく、そのままお刺身や炭火焼きで食べることができます。その味はいつも食べているものとは全く違いました。普段は堀りたてとはいきませんが、アクは空気にふれればふれるほどでてきてしまうので、あまり地面からでていないものが良いため、たけのこを選ぶときは、なるべく土がついていて穂先が緑色でないものがいいようです。
桜前線が長い時間で日本を縦断するように、同じ国内でも旬にはかなりの差があります。そして同じ野菜でも先駆けで売られるハウスでつくられたもの、大量に出回る露地ものでは風味も違います。アスパラガスでもわかるように、育てられた土地によっても違いはでてくるものです。料理人はそんな微妙な食材の旬を取り入れお客様に季節を楽しんでいただけるように考えて料理を作っています。桜がもたらす春の喜びのようなものを、料理でも感じていただけたら嬉しいのです。
4月のチラシは2枚です。



3月のスープは、今月のコラム「まかないについて」にちなみ、佐藤シェフが余った野菜を使ってまかないで作っていたという「まかないのミネストローネ」でした。
ご家庭でもミネストローネを作られる方が多いかもしれませんが、やはりシェフのスープは何かが違います。
温めて盛りつけた後にパルメザンチーズをかけるのですが、そうすることでびっくりするほど味わいが深くなりました。
今回も食材の組み合わせの力を感じました。
さらに、いそがしい厨房ではミネストローネをご飯にかけて食べたり、たまごを落として食べたりしていた、というお話を伺い、真似をするためにアトリエでもなべでごはんを炊きました。

ごはんに全部スープをかける人、少しずつスープと混ぜて食べる人と様々でした。
今回は、シェフが温泉玉子を一人にひとつずつ作って下さったので、それもスープに入れていただきました。
たまごが入るとスープは優しい味わいに変身しました。
佐藤シェフの今月のコラム 11
「まかないについて」
みなさんは「まかない」を知っていますか?まかないは、料理人がお客様のためではなく、従業員の食事としてつくる料理です。わたしはホテルで修行をはじめた最初の2年間、もう一人の新人の男性と一緒に、配属された部門にいる30人分のまかないを毎日作っていました。メニューは「ごはん、スープ、サラダやおひたし、卵料理、おかず2品」と決まっていました。当時は材料は厨房にあるものを使ってよかったのですが、何を作るかを考えるために、料理の雑誌を立ち読みしたり、母に電話で聞いたりもしました。先輩から明日は麻婆豆腐が食べたいと言われると、同僚の中華部門の人に聞いたりすることもありました。
まかないを作ることは、食材を切ること、火の通し方、味つけの練習です。そして、失敗するという練習でもありました。わたしは麻婆豆腐を初めて作ったとき、豆板醤を入れすぎてしまい先輩に怒られました。それからしばらく作らないでいると、「なんだ?この前の失敗にびびったのか?」と言われました。こうして、失敗しても何度もチャンスは与えられます。ときには、失敗したものを年齢の近い先輩が味を直してくれたりもしました。失敗の修正の仕方も学ぶことができるのです。
メニューとは別に、その部署のシェフのために毎日2個玉のオムレツも作りました。2個玉は3個玉より難しいのですが、できたオムレツの真ん中にシェフがナイフをいれて、とろりと卵がでてこないと、シェフはそれを食べず、ただ他の先輩に「オムレツを作ってくれ」と言いました。食べてもらえるまで、3ヶ月以上かかりました。
今は時代が変わって、経営上や就業時間の問題、一緒にまかないを食べることが嫌がられるなどの理由でまかないを作らないところもあります。そのことは一概にどうということはできません。
わたしは今の子どもたちは失敗を過度におそれる傾向にあるのではないかと危惧しています。本当は、失敗することが成功への最も近道だと思うのですが、様々な場所で、たくさん失敗をすることや、失敗したときの対処を学べる環境が少なくなっているのではないでしょうか?もうひとつ、情報が得やすくなっていることで、実際にできるものと勘違いしてしまっていることも多いのではないか、と思います。ふわふわでおいしそうなオムレツを作るには、どのように卵を吟味し、どのフライパンを選び、どの火加減で、どの器にどのように盛りつけるのか、ひとつひとつのプロセスを頭で理解し、体で習得していかなければいけません。そのためには時間がかかり、努力が必要なのです。それはスポーツなどと一緒です。わたし自身は当時まかないを作ることからたくさんのことを学べたことがありがたかったと思っています。
3月のチラシです


2月27日(土)のスープは「おやつのスープ、リンゴのスープ」でした。
冷たいリンゴのクリームスープに、リンゴをアップルティーで煮たジュレを合わせていただきます。
大人はシナモンをかけて。

これはスープに入っているジュレです
リンゴのクリームスープだけでもおいしいのですが、そこに複雑な香りのジュレが合わさると舌触り、味わいともにぐんと幅が広がります。
それは驚きであり感動です。
ジュレにはまだ充分に堅さを残すリンゴも入っていて、そのさわやかさと食感がさらにおいしさを増しています。
料理とはオーケストラのようです。
今回も薪釜のパン屋さん「麦屋」さんのリンゴとレーズンのパンを合わせていただきました。

佐藤シェフの今月のコラム 10
「引き出しをふやす」
わたしは子どもを教育するということは「引き出しをふやす機会をたくさん与える」ということだと考えています。自分の子どもはもちろんですが、将来料理人になりたい若い人達と接することも多くあります。そういう若者には、特にいろいろなものを食べる機会をつくりたいです。若いときはお金がなくなかなか食べられないだろうけれど、同じ名前の料理でもつくり方によって味は違うということなどを知ってもらいたいと思っています。
なぜ引き出しが多いほどいいのでしょうか?何でもできるのがいい、ということではありません。
わたしは、ホテルオークラ、シンガポールの大使館、東京の白金台のとても高級なフレンチレストランを経て、現在地元宮城県の仙台市でオーナーシェフとして働いています。お店をだすにあたって、仙台になかったお店にしようと考えてここまでやってきました。
でも、これから先は、その土地のその環境でしかできない空間を、地域の人たちとやっていくような場所にしたいと考えています。もちろん、お店はお客様に非日常を体験してもらう場所として存在しますが、それをその地域の老若男女全ての人が充分に味わうことのできるようなメニューやサービスはなんだろうと考えているのです。メディアは旬なもの、新しいものを常に追い求めているけれど、そういうものではなく、自分にできる、来て下さる人を思うお店とはどんなものなのかを考え続けているのです。
夢はかなえるだけではなく、継続していくものです。なんでもそうだとおもいますが、お店をもって、その先どのように続けていくかということは、どこかから持ってきた薄っぺらい考えではとうていできるものではありません。それを考える上で助けになり、しっかり支えてくれるのは自分の経験だと思うのです。
だから、たくさんの経験をする、つまり引き出しをふやすということがとても大切だと考えるのです。特に、子どもにとっては、それが自分の好きなことを見つけることにつながり、そしてそれを続けていく力になると信じています。
2016年2月のチラシです。


1月23日(土)のスープは丸どりのスープでした。
今回は、特別にそのスープで炊いたチキンライスがつきました。

丸どりのスープは鶏を1羽まるごと水から弱火にかけます。沸騰する直前で火を止め、そのまま置いておきます。一緒にレモングラス、カー、何とかオレンジの葉を入れてにるため、薄く黄緑がかった透明なスープにはいろいろな香りがします。

チキンライスにはスープになった鶏肉とパクチーがつき、鶏肉には生のチリをきざんでいれたしょうゆのソースをかけていただきます。鶏肉とパクチーとライスをあわせて食べるととても複雑な味になります。スープとともに、組み合わせの妙、料理とはこういうものなのだ、と心から感じるものでした。
今回は食後に紅茶をいれました。
香草の香りが残っているため、いつもよりおいしく感じました。
佐藤シェフの今月のコラム 9
「世界の多様性」
前のコラムでも書きましたが、わたしは若いときシンガポールで大使館の料理長として働きました。シンガポールは他民族国家です。例えばタイ人はヒンズー教徒、マレーシア人はイスラム教徒、中国人は仏教徒が大多数を占めていますが、そういう文化も宗教も違う人々が同じ場所で暮らしています。買い物に出かけるときは大使館のドライバーに乗せていってもらうのですが、その人はマレー系の人で、買い物バックの中に豚肉が入っているかを聞かれます。入っているときはバック
を持つことも拒否されます。同じように、チャイナタウンで丸焼き用の子豚を買った後には、次のマレー系のお店ではそれを持って買い物はできません。現代はとても複雑で、ひとつの国の同じ民族の中でも宗教や文化の対立があり、さらに同じ宗教でも〜派がありそれ同士が対立するというのがめずらしくありません。その宗教や民族にしかない文化があり、それを理解しなければ料理もつくれないのです。
逆に料理から考えていくと、シルクロードに添ってスパイスや食材の使われ方が違っています。それはその時代の人達が自分たちの文化で使えるように変えていったからだと思います。
フランス料理だけでみても、古典フレンチ、現代フレンチ、コンテンポラリーフレンチ、イノベーション( innovation:革新)と様々なものがあり、イノベーションというものではフランス料理とはこうだ、という明確なところもなくなってきています。
多種多様である上に常に変化し続けている世界、料理をつくることで感じるのは、自分と異なるものを理解をする努力と、相手のことを思いやることを心がけなければいけないということです。