Author Archives: satachi

3月のスープの日

ミネストローネ

3月のスープは、今月のコラム「まかないについて」にちなみ、佐藤シェフが余った野菜を使ってまかないで作っていたという「まかないのミネストローネ」でした。
ご家庭でもミネストローネを作られる方が多いかもしれませんが、やはりシェフのスープは何かが違います。
温めて盛りつけた後にパルメザンチーズをかけるのですが、そうすることでびっくりするほど味わいが深くなりました。
今回も食材の組み合わせの力を感じました。

さらに、いそがしい厨房ではミネストローネをご飯にかけて食べたり、たまごを落として食べたりしていた、というお話を伺い、真似をするためにアトリエでもなべでごはんを炊きました。

なべ

ごはんに全部スープをかける人、少しずつスープと混ぜて食べる人と様々でした。
今回は、シェフが温泉玉子を一人にひとつずつ作って下さったので、それもスープに入れていただきました。
たまごが入るとスープは優しい味わいに変身しました。

佐藤シェフの今月のコラム 11

「まかないについて」

みなさんは「まかない」を知っていますか?まかないは、料理人がお客様のためではなく、従業員の食事としてつくる料理です。わたしはホテルで修行をはじめた最初の2年間、もう一人の新人の男性と一緒に、配属された部門にいる30人分のまかないを毎日作っていました。メニューは「ごはん、スープ、サラダやおひたし、卵料理、おかず2品」と決まっていました。当時は材料は厨房にあるものを使ってよかったのですが、何を作るかを考えるために、料理の雑誌を立ち読みしたり、母に電話で聞いたりもしました。先輩から明日は麻婆豆腐が食べたいと言われると、同僚の中華部門の人に聞いたりすることもありました。
 まかないを作ることは、食材を切ること、火の通し方、味つけの練習です。そして、失敗するという練習でもありました。わたしは麻婆豆腐を初めて作ったとき、豆板醤を入れすぎてしまい先輩に怒られました。それからしばらく作らないでいると、「なんだ?この前の失敗にびびったのか?」と言われました。こうして、失敗しても何度もチャンスは与えられます。ときには、失敗したものを年齢の近い先輩が味を直してくれたりもしました。失敗の修正の仕方も学ぶことができるのです。
 メニューとは別に、その部署のシェフのために毎日2個玉のオムレツも作りました。2個玉は3個玉より難しいのですが、できたオムレツの真ん中にシェフがナイフをいれて、とろりと卵がでてこないと、シェフはそれを食べず、ただ他の先輩に「オムレツを作ってくれ」と言いました。食べてもらえるまで、3ヶ月以上かかりました。
 今は時代が変わって、経営上や就業時間の問題、一緒にまかないを食べることが嫌がられるなどの理由でまかないを作らないところもあります。そのことは一概にどうということはできません。
 わたしは今の子どもたちは失敗を過度におそれる傾向にあるのではないかと危惧しています。本当は、失敗することが成功への最も近道だと思うのですが、様々な場所で、たくさん失敗をすることや、失敗したときの対処を学べる環境が少なくなっているのではないでしょうか?もうひとつ、情報が得やすくなっていることで、実際にできるものと勘違いしてしまっていることも多いのではないか、と思います。ふわふわでおいしそうなオムレツを作るには、どのように卵を吟味し、どのフライパンを選び、どの火加減で、どの器にどのように盛りつけるのか、ひとつひとつのプロセスを頭で理解し、体で習得していかなければいけません。そのためには時間がかかり、努力が必要なのです。それはスポーツなどと一緒です。わたし自身は当時まかないを作ることからたくさんのことを学べたことがありがたかったと思っています。
 

2月のスープの日

2月のスープ

2月27日(土)のスープは「おやつのスープ、リンゴのスープ」でした。
冷たいリンゴのクリームスープに、リンゴをアップルティーで煮たジュレを合わせていただきます。
大人はシナモンをかけて。

りんごのジュレ
これはスープに入っているジュレです

リンゴのクリームスープだけでもおいしいのですが、そこに複雑な香りのジュレが合わさると舌触り、味わいともにぐんと幅が広がります。
それは驚きであり感動です。
ジュレにはまだ充分に堅さを残すリンゴも入っていて、そのさわやかさと食感がさらにおいしさを増しています。

料理とはオーケストラのようです。

今回も薪釜のパン屋さん「麦屋」さんのリンゴとレーズンのパンを合わせていただきました。

リンゴとレーズンのパン

佐藤シェフの今月のコラム 10

「引き出しをふやす」

わたしは子どもを教育するということは「引き出しをふやす機会をたくさん与える」ということだと考えています。自分の子どもはもちろんですが、将来料理人になりたい若い人達と接することも多くあります。そういう若者には、特にいろいろなものを食べる機会をつくりたいです。若いときはお金がなくなかなか食べられないだろうけれど、同じ名前の料理でもつくり方によって味は違うということなどを知ってもらいたいと思っています。
 なぜ引き出しが多いほどいいのでしょうか?何でもできるのがいい、ということではありません。
 わたしは、ホテルオークラ、シンガポールの大使館、東京の白金台のとても高級なフレンチレストランを経て、現在地元宮城県の仙台市でオーナーシェフとして働いています。お店をだすにあたって、仙台になかったお店にしようと考えてここまでやってきました。
 でも、これから先は、その土地のその環境でしかできない空間を、地域の人たちとやっていくような場所にしたいと考えています。もちろん、お店はお客様に非日常を体験してもらう場所として存在しますが、それをその地域の老若男女全ての人が充分に味わうことのできるようなメニューやサービスはなんだろうと考えているのです。メディアは旬なもの、新しいものを常に追い求めているけれど、そういうものではなく、自分にできる、来て下さる人を思うお店とはどんなものなのかを考え続けているのです。
 夢はかなえるだけではなく、継続していくものです。なんでもそうだとおもいますが、お店をもって、その先どのように続けていくかということは、どこかから持ってきた薄っぺらい考えではとうていできるものではありません。それを考える上で助けになり、しっかり支えてくれるのは自分の経験だと思うのです。
 だから、たくさんの経験をする、つまり引き出しをふやすということがとても大切だと考えるのです。特に、子どもにとっては、それが自分の好きなことを見つけることにつながり、そしてそれを続けていく力になると信じています。

1月のスープの日

1月23日(土)のスープは丸どりのスープでした。
今回は、特別にそのスープで炊いたチキンライスがつきました。

2月スープ

丸どりのスープは鶏を1羽まるごと水から弱火にかけます。沸騰する直前で火を止め、そのまま置いておきます。一緒にレモングラス、カー、何とかオレンジの葉を入れてにるため、薄く黄緑がかった透明なスープにはいろいろな香りがします。

チキンライス

チキンライスにはスープになった鶏肉とパクチーがつき、鶏肉には生のチリをきざんでいれたしょうゆのソースをかけていただきます。鶏肉とパクチーとライスをあわせて食べるととても複雑な味になります。スープとともに、組み合わせの妙、料理とはこういうものなのだ、と心から感じるものでした。

今回は食後に紅茶をいれました。
香草の香りが残っているため、いつもよりおいしく感じました。

佐藤シェフの今月のコラム 9

「世界の多様性」
 
前のコラムでも書きましたが、わたしは若いときシンガポールで大使館の料理長として働きました。シンガポールは他民族国家です。例えばタイ人はヒンズー教徒、マレーシア人はイスラム教徒、中国人は仏教徒が大多数を占めていますが、そういう文化も宗教も違う人々が同じ場所で暮らしています。買い物に出かけるときは大使館のドライバーに乗せていってもらうのですが、その人はマレー系の人で、買い物バックの中に豚肉が入っているかを聞かれます。入っているときはバック
を持つことも拒否されます。同じように、チャイナタウンで丸焼き用の子豚を買った後には、次のマレー系のお店ではそれを持って買い物はできません。現代はとても複雑で、ひとつの国の同じ民族の中でも宗教や文化の対立があり、さらに同じ宗教でも〜派がありそれ同士が対立するというのがめずらしくありません。その宗教や民族にしかない文化があり、それを理解しなければ料理もつくれないのです。
 逆に料理から考えていくと、シルクロードに添ってスパイスや食材の使われ方が違っています。それはその時代の人達が自分たちの文化で使えるように変えていったからだと思います。
 フランス料理だけでみても、古典フレンチ、現代フレンチ、コンテンポラリーフレンチ、イノベーション( innovation:革新)と様々なものがあり、イノベーションというものではフランス料理とはこうだ、という明確なところもなくなってきています。
 多種多様である上に常に変化し続けている世界、料理をつくることで感じるのは、自分と異なるものを理解をする努力と、相手のことを思いやることを心がけなければいけないということです。

アトリエサタチワークショップのお勉強会はじまる・第1回

宮城県美術館の教育普及部の「美術なんでも相談」を利用して、齋正弘さんとのお勉強会が始まりました。
アトリエがより良い活動を行うにはどうしたらよいか、毎回アトリエで行われる活動をもとにした具体的な勉強会が行われる予定です。
どなたでもご参加いただけます。

第1回目は2015年12月11日(金)13:00〜16:45まで行われました。
1回目のため、美術館とはどういう場所か?アートとは何か?こどもの表現とはなにか?ワークショップとはなにか?についての確認が行われました。

勉強会の資料、その報告書もアップいたしますが、もっときちんと読みたいという方はメールにてご連絡下さい。

勉強会1
勉強会2
勉強会3
報告1
報告2
報告3
報告4
報告5
報告6

募集・カフェクラフトでの作業台作り

カフェクラフトとの企画チラシ

本格的な家具を自分でつくることができるカフェクラフトとのコラボ企画です。

木や作業に使う機械について教えてもらうところから始まり、アトリエで使う作業台はどのようなものがいいかを話合い、模型をつくり、実際に組み立てまで行います。

お店に行けば、なんとなく勝手の良い物が手に入る時代、ものはどういうふうに作られているのか、使う人のことを考えるとはどういうことなのか知っていますか?
いつもより本格的な木工をするだけでなく、その背景まで丁寧に考える機会というのはなかなかないものです。

木は重く、工具はプロが使う本物、実際は大人にも大変な作業です。
今回は、親子で募集しますが、大人は子どもの付き添いではなく、対等に意見をかわし子どもが難しいところは作っていくという役割を果たします。

ひとりひとり持って帰れるようなものは作りませんが、この経験はこれから生活する上で、実際の役に立つことは間違いありません。
日曜大工だけでなく、家具などものを選ぶときの目も違ってきます。

11月のスープの日

11月スープ

11月28日土曜日のスープの日は、キクイモのクリームスープでした。

きくいも

キクイモ、あまりスーパーではみかけません。
菊のような花が咲くのでキクイモだそうです。
見た目はショウガのようです。
味もいわゆる芋とは少し違うようでした。

栄養価が高く、調理すると黒っぽくなるということでしたが、きれいなクリームスープにしてくれました。
食べてみるとくせはないのですが、元気をもらえそうな独特の風味がかすかにします。
3ヶ月くらいが旬ということですが、本当に冬のはじまりにぴったりなスープでした。

先月のスープの日から村田町の麦屋さんのパンを一緒に食べています。
麦屋さんのパンは薪釜で焼いたパンです。
薪釜のパンはそとはしっかりとしているのですが、中はふんわりやわらかで、薪釜の香りがする風味豊かなパンです。
今回は外側にひまわりの種がびっしりついていて、中にはみじん切りのにんじんがはいっているパンを食べました。
ひまわりの種は油っこくておいしいです。

ひまわりのたねのパン

佐藤シェフの今月のコラム8

「新聞を読む」

 わたしは高校をでてすぐに料理の道に進みました。その時はお金もなく、ほとんどの時間を料理に費やしていたため、新聞は読みませんでした。何かを読むといえば、当時はまだインターネットで調べるという時代でもなかったので、神田の洋書専門の古本屋でフランス料理の原書を買って、辞書をひきながら読むぐらいでした。
 それが毎日、新聞を読むようになったのは、シンガポールで大使館の料理長になったからです。現地では日本の雑誌なども売られていましたが値段は3倍ちかくしましたので、日本の情報を知りたいと思うと一日遅れで届く新聞を大使が読んだ後に読むのが一番だったのです。また、大使館で接する人は高学歴の人ばかりで、話題についていくためにはどうしても自分の知識をふやす必要がありました。大使館では3紙とっていましたが、3紙とも隅から隅まで読みました。大使館にいる3年半、そのように新聞を読む毎日を過ごしたことで、今でも新聞を読むことは習慣となり、世間のことがわからないと不安に感じるようになりました。
 今は娘たちにもこども新聞を読ませるようにしています。読む練習にもなりますし、優しく書いてあるとはいえ、最新のニュースが大人の読む物と変わらず詳しく書かれていてとてもためになります。わたしは何かを手に入れたいと思ったり、したいと思うとき、それを手に入れたり実現したりするためには勉強することが必要だと考えています。世界ではたくさんの人がその道の第一線で活躍していますが、そうなるためには他の人よりいろいろな面で努力してきているのでしょう。
 今回は料理のお話から少しそれましたが、わたしの経験からどの分野でも広い世界へでていくためには、若いときに5年後10年後をみすえて学ぶことが大切だと感じています。