Monthly Archives: 6月 2016

5月のスープの日

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今月のスープはグリーンピースの冷製クリームスープ、新タマネギ入りでした。
クルトンと、大人は黒こしょうをのせます。

グリーンピースの香りと甘さを新タマネギの甘さがひきたてています。
グリーンピースは豆の中では苦手な人が多いかもしれません。
それでもこのスープは誰でも好きになりそうです。
それほど豆の香りも味もとても洗練されているのです。
素材をそのまま味わうのもとてもいいですが、料理とはこういうものなのだ、と感じる美しいスープでした。

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そして、グリーンピースとそらまめがちょうど旬を迎えたので、グリーンピースごはんとそらまめごはんを炊きました。
米に昆布と塩だけで味付けしたものにどさっと豆を入れて炊くだけです。
どちらの豆も癖がありますが、香りはそのままにとても甘くなりました。
こちらはほとんど手は加えない、素材の力強さを味わえました。

佐藤シェフの今月のコラム 13

「肉の焼き方」

今回は肉の焼き方についてです。これはとても専門的な話になります。
 「肉を焼く」「肉に火をとおす」と一言で言っても、料理人一人一人それをどのように考えているかが違っているくらい、肉を焼くということは複雑です。
 まず肉の種類がたくさんあります。牛肉、鹿、野鳥などレアでもたべられるもの、豚や羊のように脂がたくさんついた状態で焼くことの多い肉、さらに、同じ動物でも食べているものや育った環境によって肉質も違います。その種類や調理するときの肉の大きさによって焼く方法は全く違ってきます。普通は肉に急激に火を入れてしまうと、うまみが逃げてしまいます。それではどうやって良い温度で中まで火をまわせるか?例えば常温に戻した薄切り肉ならさっと焼けば余熱で火がまわります。羊や豚のように脂の多い肉のかたまりならオーブンのような高温にも耐えられ、脂身を下にしてそれ自体からでた脂で焼くことにより表面がパサつかないようじっくりと火を入れることができます。ちなみに同じ考え方でバターをちょうど良い温度に保ち、それをこまめにかけながら魚に熱をとおしていくのがムニエルです。
 そして肉を焼く道具も様々です。昔ながらの方法ではフライパン、オーブンなどがあります。先ほど書いたようにどのように熱を加えるかによって使い分けられますが、使いこなすには経験が必要になります。今は肉の内部の温度を測る芯温計や真空パックで湯せんをする機械などもあります。技術の発達によってどんな肉でも温度を機械が調節して化学的にベストな状態を保ち火をとおしてくれるのです。
 フランス料理店ではたいていお客様には焼き方は聞かず、シェフがその肉にとって一番良いと思う状態で焼いてだす場合が多いです。はじめに「肉を焼く」ということが人によって違うと言いましたが、それはどの状態がベストか?ということが料理人によってかなり違うということなのです。その考え方は理屈ではなく、実際の経験の積み重ねの結果でもあります。
 それを考えると、誰でも同じように焼ける機械というのはとてもすばらしいものなのですが、人材育成の面では、はじめからからそれを使ってしまうと基礎がわからなくなるというおそれがあるように思います。一番単純な方法を使って基本的な技術を身につける過程は、自分のものの見方をつくるときでもあります。そして何かを続けていく場合、自分の考えをしっかり持つということはとても大切なことなのです。